しばいぬ紀行

しばいぬも歩けば棒にあたって気づいたよしなしごと

生粋のADV最後の金字塔。「SNATCHER」

今回のお題は「スナッチャー」。いきなり話はそれますが、この作品。現状ではかなり入手困難なようです。かなり昔にPS版ザ・ベストとして発売されて以来、現在ではもう生産されていないらしく、中古店でも見かけなくなりました。見かけたら即ゲットです。ええ。千円以下で買えます。たぶん。

SNATCHER 【PCエンジン】

SNATCHER 【PCエンジン】

 

 
筆者の偏見に溢れる「ADVゲーム」の定義とは、プレイヤー主観で進む物語性重視のコマンド選択式テキストゲームであり、なおかつその選択肢はできるだけプレイヤーの能動的な探索を忠実に反映させるものでなくてはならない。

 

それ故に「調べる」→「机」→「引き出し」→レスポンスというディレクトリ型の選択形式になることが多いのですが、「キーボード」という究極の入力媒体を標準で持たない家庭用ハードでは仕方ない事だと思います。ちなみにこのディレクトリ型の選択形式を最初に考案したのが、かの堀井雄二氏。

 

そして時を超え今蘇る(?)筆者の知る限り最後の超硬派ハードボイルドアドベンチャーゲームこそ!今ではすっかり有名人、でも当時はまったく無名だった小島秀夫氏が送るこの作品「スナッチャー」です。

 

ゲームの主題ともなっている、「スナッチャー」とは。暴力と退廃の街ネオ・コウベシティに突如現れた謎の生命体バイオロイド。彼らは人間を殺害、密かにすり替わる事から、「SNATCHER」と呼ばれた…この異常事態に対し政府は対スナッチャー用特殊警察班「JUNKER」を発足。JUNKERとSNATCHERの壮絶な闘いが始まる…


【PCE】 スナッチャー 【OP&Prolog】 - YouTube


という導入。システム自体はまったく当時の王道をゆくディレクトリ選択肢型。しかしながらCD-ROMという媒体をフルに活かし随所に挿入されるボイスが物語を盛り上げます。また、この声優陣の豪華なこと豪華な事。亡き塩沢兼人氏が30分近くも語り続けるシーンはこの作品以外には知りません。

 

そしてADVというジャンルの核であり、それをとったら何も残らない…ハズなのですが最近は絵は残るようで。そうストーリー。物語ですが、これはもう言わずもがな。小島氏の映画好きは有名だそうですが、この作品をプレイされればなるほど納得。随所に同類をニヤリとさせる演出、セリフが散りばめられています。

 

なによりこの作品の特筆すべき点は、全ての家庭用アドベンチャーゲームが抱えていたジレンマであるところの「全部のコマンドを数回選べば勝手に物語が進む」という「ゲーム」というエンターティメントを根本から覆しかねない大問題に一石を投じた事。この作品、物語の要所要所で「ドラクエの名前入力」の要領で、プレイヤーに文字列の入力を求めてきます。いままでの物語の中にひそかに、あるいは大胆(face to faceとか)にひかれた伏線をプレイヤー自身が紡ぎ合わせ、答えを導き出さねばなりません。一見地味なこのフューチャーの効果は絶大で、彼の巧みな演出と相まって、プレイヤーに劇的な「俺が捜査してる」感を与えます。


【PCE】スナッチャー:CD-ROMantic [ACT1] - YouTube

アドベンチャーゲームファンを自認するなら一度はプレイしておきたい、ギリアン&メタルの名コンビを産みだした歴史的秀作。酒場でポロリと漏らせば「オッ、お客さん、通だねぇ〜」ってなモンですよ。

 

実はこの作品、1988年(なんと今から24年前)に、パソコン版で今作のACT1とACT2にあたる部分が発売されているのですが、結局最後のツメとなるACT3が発表されないまま、未完の作品となっていました。そして1992年、PC-エンジン版に待望のACT3を収録し、4年の歳月を経て完結しました。なお、今作品をプレイするにあたっては、可能な限りPC-エンジン版でプレイされる事をお勧めします。PS版への移植にあたって、ボイスは全てPCEからぶっこ抜いたらしく、若干音がこもり気味。尚かつ、この世界感には8bit機のシャープな(モノはいいようですが)グラフィックの方が圧倒的にマッチしています。上位機種への移植が裏目にでた希有な例です。