しばいぬ紀行

しばいぬも歩けば棒にあたって気づいたよしなしごと

給料は振り込み。「ラグランジュ・ポイント」

任天堂のカードヒーロー,古くはエニックスのソウルブレイダー等、内容は秀逸なのに、外観のディティールや専門誌の紹介の仕方などで不遇を囲った作品は数あれど、今作に関しては、「真面目にやったのに、時代の空気がアレ」だったせいで、奮闘むなしく「マイナー」の烙印を押されてしまいました。そんな、ファミコン後期の傑作SFRPG。

ラグランジュポイント

ラグランジュポイント

 

 徳間書店(故・ファミマガ)との合同企画RPG。多少なりとも自分の目と耳でゲームソフトの優劣を見極めて購入し、結果途方に暮れた経験をお持ちの方なら、このフレーズだけでそれなりの戦慄を覚える事と思われますが、意外や意外の秀作に仕上がっています。恐らく、この頃のコナミは「原作モノ」のメーカーとしては最強の部類に入るのでは無いでしょうか。「魍魎戦記MADARA」然り。最近でも、「ヒカルの碁」,「遊戯王」等原作をうまく活かした作品作りで評価を高める等、やる気を出したバンダイを見る思いです。

 

本作品の舞台は機械文明が発達した近未来。「ラグランジュ・ポイント」とは本来、月と地球の重力が釣り合う宇宙空間上のある地点を指すのですのが、物語はまさにそのラグランジュポイントに設置されたコロニーへの調査隊が帰還する所から始まります。

 

世界観は徹底したSFで、扱う武器も銃器,電子武器が基本。"魔法"にあたる要素は"HPかいふく1"や"もたつキット"等のアイテムを持たせる事で使用する事が出来ます。ほとんどのキットは装備できる人が限定されており、誰に持たせるかによって、役割分担を自然と意識する事になります。いわゆる"攻撃魔法"は存在せず、こちらはキャラごとに設定された"必殺技"が受け持ちます。

 

中には「いや、それは魔法だろ」と突っ込みたくなるモノもありますが…。(リタとか)この必殺技も「機械に大ダメージ」「生物に大ダメージ」「無属性だけど1体だけに大ダメージ」というように実にハッキリ区別されており、こちらもキャラ立てに大きく貢献しています。前述の「無属性だけど1体だけに大ダメージ」は、実は主人公の必殺技で、このワザのおかげでボス戦の主力足りえるのは今思うと良く出来てるというか、何と言うか。


ラグランジュポイント Lagrange Point (Famicom, 1991) - YouTube

 

物語の中盤あたりから、レジスタンスの本拠地である"サテライトベース"へ行けるようになるのですが、そこにある「ファクトリー」という施設が後半の難易度を大きく左右する、重要なファクターとなっています。ここでは、武器同士の「合成」が可能で、組み合わせ次第で非常に強力な武器を入手する事ができます。ただ高価な武器を組み合わせれば良いというモノでは無いのがポイントで、コツは失敗を繰り返しながら感覚で掴むしか無いのですが、初歩的かつ、ボチボチ効果的な組み合わせは、このコロニーに辿り付くまでの間に、街の人との会話等で散々耳にする事ができます。

 

また、この作品は装備品が人を選ぶ…というか装備するのに必要なステータスと言うものがそれぞれに設定されており、例え中盤でベストな組み合わせをたまたま見つけて超強力な武器を入手したとしても、ある程度のレベルになるまで装備する事が出来ない為、バランスを崩す事もありません(ちっ)。

 

本作では、フィールドの移動は基本的に"乗り物"を利用します。この乗り物を利用するにも"パイロボット"と呼ばれるロボットが必要で、最初は舗装された道しか走行できない"パイロボット1",物語を進めてゆくと、未舗装の道を走行できる乗り物や,海の上を走れる乗り物に乗れるようになります。この辺も、移動手段を得ることによって世界が広がるRPGの王道的フューチャーではありますが、パイボットを載せかえるだけで全ての乗り物がひとつの施設から利用できる点は他と比べて一歩リードしている感があります。

 

移動が乗り物,給料は振り込み、などのシステムもさることながら、BGMの完成度が総じて非常に高く,全体的に大人な雰囲気を醸し出しています。特に街の曲。矩形派倶楽部という強力なサウンドチームを擁するコナミにしては珍しく、BGMの一部を外部に依頼しており,雰囲気が異なるのもそのはずで、レベッカの土橋安騎夫氏、高橋教之氏がそれを担当。

 

この作品のエンディング曲は「ファミコン史上に残る名ED曲のひとつ」と称えられました。筆者もそう思います。そこに至るまでの過程はきっと苦にはならないハズですので、是非プレイしてみて下さい。