しばいぬ紀行

しばいぬも歩けば棒にあたって気づいたよしなしごと

30分で体験できる兵士達のドラマ。「重装機兵ヴァルケン」

とにかく、詳細な設定やストーリーは説明書にまかせて、ドラマの一番もりあがる部分だけをゲームにした、という印象を受けます。

重装機兵ヴァルケン

重装機兵ヴァルケン

 

 超良質なショートストーリーを観終えた時のような心地よい余韻をプレイ後に残してくれる、そんな作品。一時期これを一日一回クリアするのが日課になっていました。


作品自体はメガドライブでリリースされ大きな反響を呼んだ「重装機兵レイノス」の続編にあたります。ロボットものですが、別に機体が必殺技を繰り出すわけでも、パイロットがそろいもそろって美少年というわけでもありません。

 


[HD・SFC]重装機兵ヴァルケン[紹介単発] - YouTube


シナリオ、そして重厚なシステム(旨み)だけで勝負。飛び散る薬きょう、バーニアで吹き飛ぶメカニック、等ユーザーの心を絶妙にくすぐる細かな演出も、この作品が名作と呼ばれる所以です。横スクロールアクションゲームながら、折々のタイミングで挿入される、オペレータとパイロットの会話など、技術的にはいくらでも同様のコンセプトが実現できそうなのに、この作品のレベルを達成できているものにはついぞ出会っていません。

プラットフォームがスーパーファミコンということもあって、現在では中々入手困難なソフトではありますが、秋葉原などでは間違いなく販売されている事と思われます。なお、他のプラットフォームで続編、、のようなものや、亜種がたくさんでていますが、地雷なので避けて通ることをおすすめします。このスーパーファミコン版の足元にも及びません。ハードウェアは進化しているはずなのに、、なぜ、、。

「ムービー」という概念がまだ一般的ではなかった時代、ごまかしの効かない、いろんな形での「本当の面白さ」が問われたスーパーファミコン全盛時代にこういった隠れた名作が多いのもなんとなく頷ける話ですね。

イン壁2センチ(体感)への飽くなき挑戦。「リッジレーサー」

シュミレーターというゲーム(?)のジャンルがあります。その種類も多彩で、レース(クルマ)はもちろん、バイクや、電車、旅客機など実在する乗り物をモチーフにしたものまで多彩を極めます。

このシュミレーターにも2種類あって、完全に実物そのままの挙動、操縦を再現し「操ることの難しさ」をそのまま作品の愉悦とした物、実在するフェラーリを実物そのままに シュミレートした、セガの「F365チャレンジ」などはそのタイプの真骨頂といえます。


もう一つは、映像やある程度の計算は実物をモデルにしているものの、第一に「ゲーム」として楽しませる事を主眼に置いて、実物の操縦をある程度極めた者のみが体験できる「ワザ」の部分を割合容易な操作でプレイヤーに体験させることで愉悦を感じさせる、まさに「ゲーム」なシミュレーター。
 

リッジレーサー

リッジレーサー

 

 

そして今回のお題は後者の真骨頂。いいもの作るのに最初にそれが作れない、ナムコ。「3Dレース」という今作のジャンルでもセガのバーチャレーシングに追随する形になったものの、そこはアーケードゲーム老舗中の老舗ナムコ。この「リッジレーサー」という作品に初めて出会った時の衝撃は今でも忘れられません。

「ねえ、これ中にクルマがはいってるよ」

当時レースゲームというジャンルはセガの独壇場で、「とうとうアウトランが立体になったよ!」と、バーチャレーシングのリリース当初、初めて文明に触れた猿のように、このカクカクをカクカクとも思わずに、狂喜して友達と競いあっていました。その、初めてマッチに触れた猿にいきなりガスバーナーを突きつけたような、初代「リッジレーサー」の登場。


それこそ初めてテレビを見た人のように、「ねえ、これ中にクルマがはいってるよ」…と、それぐらい、このリリースは衝撃的でした。

現在では使われていて当たり前のテクスチャー(カクカクの面に絵を描く) やアンチエイリアス(ポリゴン特有ののカクカクを無くす)といった当時最新極まりない技術を惜しみなく注ぎ込み、立体=カクカクの常識を打ち破り、その鮮烈なデビューを飾りました。


懐かしすぎる、NAMCOの【リッジレーサー】をプレイ(初級コース) - YouTube


「ゲーム」としての出来も、もちろん当時のレースゲームの中では群を抜いて秀逸でした。コーナリングの際にわざと後輪をスリップさせる事によって、車体を扇状に振らせてコーナーをスムーズにクリアさせる、「ドリフト」という実在するテクニックをはじめて公式にゲームに採用。実際にはほとんど「見せ技」の意味合いの強い技術だそうですが、こと「ゲーム」に関してはこれほど相性のいい操縦技術もありません。


カッコイイ、きもちいい、ちょっと難しい、とモロに三拍子そろったこのテクニックを駆使して、かなり極悪なコーナーを華麗にクリアした時の爽快感は何物にも代え難いものがあります。


アクセルを踏みっぱなしにしてアウト・イン・アウトでコーナーに突入、インの壁ギリギリで、アクセルを離し一瞬ブレーキ(もしくはエンジンブレーキ)、ハンドルを限界まで切って またアクセル!きゅきゅきゅきゅきゅー。ブレた車体を戻すべくカウンターステア(ハンドルの微調整)を当てて、次なるコーナーへ!

僕はシミュレーターより、ゲームが好きです。バンダイナムコさん、もう出さないんですかねえ。

ミニゲーム作りこみすぎ。「ゼロヨンチャンプRR-Z」

パソコンのアドベンチャーゲームにありがちな、自信過剰で超プラス思考の主人公。オニのよーに喧嘩に強いのもシリーズ恒例の”お約束”となっているようですね。

 

ゼロヨンチャンプRR-Z

ゼロヨンチャンプRR-Z

 

 

様々なチューンナップを施した車で400mの直線をいかに速く走り抜けるか、という実在するモータースポーツ、「ゼロヨン」を題材にしたアドベンチャーレース(?)ほんのりRPG風味(??)ゲーム。とことんまで正確にこのゲームのジャンルを表現しようとすると、これに更に麻雀とパチンコを加えないといけないので、このへんで勘弁してやって下さい。 

 


ゲーム10本クリアするまで寝ない男 ~その11~ 【ゼロヨンチャンプRR-Z】 - YouTube


直線400mですから、ハンドリングだのブレーキだのの操作は当然必要ありません。アクセルは常に全開、あとは愛車のエンジンの回転数と呼吸を合わせてシフトさばき。たったこれだけのレースがものすごく熱い。

 

もちろん、ウェット(水気の多い路面)やアイス(凍った路面)など、のいろいろな環境に合わせてそれなりのテクニックが要求されるのですが、勝敗の90%はレース前に決まっています。そう、愛車の性能を限界まで引き出すチューンナップ。低回転数時に威力を発揮するスモールチャージャー、一見すると値段も高く、後半に強力な伸びを見せるハイパーチャージャーの方が有利に見えます。たしかに普通の路面ではその効果は遥かに後者の方が高いのですが、これがアイスだと話は別。レースのほとんどを地面にグリップさせる事に集中するアイスのレースでは、グリップした瞬間に一気に伸びるスモールチャージャーの方が断然有利になります。

 

上記はほんの一例。レースの環境や愛車の性格、そして今作より加わった気温によるエンジンコンディションの調整など、 アクセルを踏み抜く前の静かな戦いにも深いこだわりを見せる作品です。


またそれとは別に、ちょっと怖いぐらい作りこまれたミニゲームもこのシリーズの大きな特徴。100%純粋に「お金をためる」ためだけに行うミニゲームなのですが、PRG、麻雀、パチンコ、と実に多彩で尚且つ異常な作りこみがなされています。

 

特にRPG。てゆかホントはこっちを出したかったのではないかと思われる程の完成度で、前作の出来も凄まじいものでしたが、今作はとうとうフィールド画面に大魔王、転職までシステムに組み込まれ「…なんかもう、チャンプとかどーでもいいや」と感じ始めてしまうぐらい遊べます。というより、いまテレビつけた人(?)は誰もこれがレースゲームだとは思わないでしょう。

 

プレイステーションで新作がリリースされていますが、このシリーズがPCエンジンCD-ROM時代にも経験した失敗を見事に踏んでおり、お薦めは出来ません。PCエンジンHuカードの第一作目、SFCでリリースのRR(第3作目ダブルアール)、もしくは、本作の3本は安心してお薦めできる秀作です。


あ、そうそう、サウンドノベルもついてます。いや、これがまた凄い完成度で…

そして伝説へ…「ドラゴンクエスト 勇者ロト三部作」

「Aボタンを押してもジャンプしないゲーム」。

ドラゴンクエスト

ドラゴンクエスト

 

 

これが僕のドラクエに対するファーストインプレッションでした。なにせ、当時まだファミコンではそもそも「RPG」という概念が存在しなかった時代。ゲームをはじめると、いきなりメッセージが表示されるのですが、誰が喋ってるのかわからない。というより、自分がどれだかわからない。困り果てた子どもたちは、 


「とりあえずAボタン押して、ジャンプしたのが自分だ」


という画期的な判別法を思いついて、実行。ジャンプこそしなかったものの、さっきと違うメッセージがスクロールして来たので、「そうか、この文字が主人公なんだな」と若干違和感を覚えつつも小学校三年生は大誤解。


ドラクエ1フルプレイ - #001 - YouTube


この当時の小学生がとる行動はただ1つ。そう、「Bダッシュ」。せめて、文字のスクロールが早くなってくれればまだ良かったのですが、そんな気の利いた機能は搭載されておらず大混乱。ここで友人がコペルニクス的発想で強引に解決を図ります。


「わかった!コレはきっと"バグ"ってやつだよ!!」
「そうか!これが"バグ"か!」


妙に嬉しかったのを覚えています。


魔物に拐われた姫を救う。ここまでは件のスーパーマリオと同じ構成ですが、姫を助けたあと、ドラゴンのクエストを達成したあとも物語が続くのは、今から考えても意表を突く展開だったと思います。囚われの洞窟からローレシアの城に帰還するまでの間に宿屋に止まるとチェックアウト時の主人のセリフが変わるのはご愛嬌。

 

ドラゴンクエストII

ドラゴンクエストII

 

 

キャラクター性がとことん希薄なこのシリーズの中でも、今作に登場した「サマルトリアの王子」は1,2を争う印象に残るキャラクターではないでしょうか。「バランスの悪さ」と「アクの強さ」で、現在でも多くの方に支持されるこの作品。

 

超絶に長い「ふっかつのじゅもん」も、各地で悲喜こもごものエピソードを生みましたね。「もょもと」にお世話になった人も多い事と思います。一方で、BGMが好評だったのもこの作品。三人目の王女を仲間にして、フィールドに繰り出した時のあの感動は、いい意味でのトラウマに。


物語終盤、大神官ハーゴンの本拠地に至るロンダルキアの洞窟はその長さと無限ループや落とし穴など構造の難易度自体から、とある雑誌による「二度と行きたくないダンジョン」の堂々第一位に輝きました。名前の由来は「飽きるだろ」のアナグラム。

 


FC版ドラゴンクエストⅡ悪霊の神々 プレイ動画part1 旅立ち - YouTube


「LoveSong探して」孤島の歌姫、アンナの奏でた旋律は今でも強烈に印象に残っています。おなじみ、ふっかつのじゅもん 入力画面の曲。ドラクエ史上に残る名曲ですよね。ちなみに、ルーラ というユニットがCDを出していますが、思い出を思い出のまま取って置きたい方にはお勧めしません。

 

ドラゴンクエストIII

ドラゴンクエストIII

 

 

シリーズ中、もっとも完成度が高く、もっとも支持者の多いのはこの三作目だと思われます。楽曲も最高。ゾーマ戦の曲をSFCの音源で聴きたいがばっかりにリメイク版買いました。


今作のメインはやはり「転職」。キャラを作る、というのも新鮮でしたし、自分で作っただけに愛着もひとしお。また、転職後も前の職業で覚えた呪文は引き継ぐとあって、みんなこぞって自家製「魔法戦士」の作成に熱をあげました。

 

そして、転職を利用しないと作成出来ない「賢者」。魔法使いと僧侶の呪文を両方いっぺんに覚えるという特性をもっており、通常はゲーム中1個しか手に入らない「さとりのしょ」を使わないと転職できません。実はあるモンスターが稀に落とすのですが、あまりにマイナーすぎてある「もうひとつの方法」の方がよく利用されました。その「方法」とは。


最初に作成できる6つの職業のうち、どう考えても普通は選ばない「あそびにん」まともに戦ってくれない。ろくなものが装備できない。「運」だけは異常に成長するが、ほかはさっぱり伸びない。等発売当初はマニア向けのお遊びキャラとして位置付けられていたこのキャラ。なんと、レベル20まで育てると、「さとりのしょ」無しでいきなり「賢者」に転職できるのです。


勇者、武道家、僧侶、魔法使いという編成で、まず僧侶を賢者にして魔法使いを遊び人と交代。気合でレベル20まであげて賢者ふたりにして、両方ベホマを覚えたらバラモスどつきに行くというのが僕の黄金攻略パターンでした。

ドラゴンクエストⅢ バラモスの城とアレフガルドの世界へ FC版 - YouTube


ところで今作。「ロトシリーズ完結編」であるにも関わらず「勇者ロト」という名前がいっこうに出てこないまま、魔王バラモスとの対決までストーリーが展開してしまいます。そして相次ぐバシルーラやイオナズンにもめげず、バラモスを倒してアリアハンの城に凱旋。これで世界に平和が戻った……?と思ったのも束の間。シリーズ恒例の「真のボス」からの招待状が届き、舞台は暗闇の世界へ。ギアガの大穴を抜けてたどり着いたその世界はなんとIの舞台「アレフガルド」


ピアノソロで流れるあのテーマ。しばらく呆然自失と聴き惚れて、おもむろに歩きはじめるといきなりI、IIのモンスターの手厚い歓迎が。スライムベスにキメラ、マドハンドやゴールドマンまで友情出演。滅ぶ前のドムドーラやゴーレムのまだ存在しなかったころの城塞都市メルキド、ガライの港町はまだ小さなほこらでした。

 

そしてマイラの村でジパングの刀鍛冶に精製してもらう、「おうじゃのけん」。日本刀だったんですね、アレ。「どうぐ」で使うとバギクロスというのも何となく頷けます。「たいようのいし」「あまぐものつえ」を合わせてにじのはしを架けて……まんまI。


暗黒の城で、謎の失踪を遂げた勇者の父親との運命の再開、そして別れ。どうやって海を渡ったのかはシリーズ七不思議の一つに数えられました。そして真のラスボス、壮大かつ勇壮なBGMに乗せてゾーマとの決戦。「ひかりのたま」を使うと弱らせられるものの、さすがにここまで伏線を引っ張ってきただけあって、その強大さたるやハーゴン、シドーの比ではありません。「ひかりのたま」の効力で属性が反転したのか、はたまた単なるバグなのか、本来回復の魔法であるベホマでダメージが与えられるのは有名な話。そして死闘の末、遂に魔王ゾーマを屠ると、おなじみの脱出シーン世界の夜明け、と続いて真のエンディング。


「実は今作の主人公こそが、後に語り継がれる”勇者ロト”その人であった」
というしめくくり。


1歩あるくたびにレベルが1あがる裏技、不思議な帽子、幸せの靴、等のレアアイテムの存在、一度クリアすると主人公に「勇者ロト」の称号がつき、勇者をパーティーから外せるといった、クリア後のお楽しみが充実していたのも今作でしたね。

「せーの!」。「ダンジョンズ&ドラゴンズ2 シャドーオーバーミスタラ」

アーケードゲーム史上最強のコストパフォーマンスを誇る作品です。もちろんプレイヤーにとって。 

 

ダンジョンズ&ドラゴンズ ーミスタラ英雄戦記ー

ダンジョンズ&ドラゴンズ ーミスタラ英雄戦記ー

 

 

ワンコインで1時間半近くも遊ばれたらゲームセンターもたまったもんじゃありません。ワンコイン当たりのプレイ時間が少なければ少ないほど、「回転率が高い」といって、ゲームセンター側ではこれが高くて尚且つ人気のある(多くの人がプレイしてくれる)作品ほど好まれる訳で、同じワンコインでも下手すると2,3分で終わってしまう対戦格闘がこれだけ隆盛を誇っていたのもお店側にとっても頷ける話ですね。

しかしながら、「ワンコインでどれだけ長く遊べるか?」というのも多くのゲーマー達にとって、それだけで一面のモチベーションになってしまう程重要な要素であって、この作品はとことんまでそちら側にウェイトが置かれています。


返す返す、お店側にはたまったもんじゃありません。…が、どこのパチンコ屋さんにも1台ぐらいは、ホントに設定6な「新世紀エヴァンゲリオン」が置いてあるように、大抵のやる気のあるゲームセンターの2店に1つぐらいは置いてあります。

 


Dungeons & Dragons SOM Fighter part 1 of 6 - YouTube


肝心のゲーム内容ですが、「多人数プレイ可能のアクションRPG」まがりなりともRPGですよ、お客さん。ワンコインで10分遊べる赤い筐体のドラクエIVみたいなセコいやつではなく、ホントにRPG。バリバリの体育会系ファイターや、まっちょなクレリック、万能故に器用貧乏なエルフに、一人でやるのはホントに辛いシーフ等さまざまな個性をもったキャラクターの中から一人を選んでプレイ。

また、カプコンらしく、コマンドでいろいろ(といっても2,3個ですが)なキャラごとの技が繰り出せます。村で装備を整えたり、村人からさまざまな情報を得たり、スコアランキングのトップのプレイヤーの名を冠した伝説の剣や、洞窟に眠るレッドドラゴンなどRPGファンのツボをよく心得たフューチャーが満載。


…と散々煽り立てておいて何ですが、初めてプレイした人の95%はステージ1のゴブリン戦車に轢き殺される事と思います。仮に突破してもステージ2の大さそりがまたくせもの。おのれ連コインで抜けてもステージ4のボス、ハーピーの洗礼が待っています。ココまで普通にプレイしても10分そこら。まずはこのハーピーを抜くまでを目標に、「ふつーのゲーム」と思って頑張りましょう。


また、ボスというボスにハメ技が効くのもこのゲームの特徴で、アイテムや魔法やコンボを上手く繋げると、開幕即退場という出たての芸人が大やけどしたみたいな一種独特の空気を満喫できます。上手な人のパターンを覚えて自分で再現できたときのあの感動たるや。お店で見かけたら、是非動画を参考にトライしてみてください。…難しいけど。

 

弾幕と無言の美学。「エスプレイド」

ラスボス戦の舞台は冬の都会の夜空なのですが、このラスボスの第1段階の放つ、「弾幕の雪」に鳥肌たった方も多いはず(動画では 2:50 あたり) 

 

f:id:shibainublogkun:20150803192913g:plain

 

ゲームの面白さを構成する大事な要素として、「気持ちよさ」というのを僕はかなり上位に置いていますが、このシューティングというジャンルほどその「気持ちよさ」の核がわかりやすいものもそうありません。

なにせバキューンでドバーンでゴゴォォッッですから。特に縦スクロール型。動体視力と反射神経にすべてをかけて弾幕をかいくぐっていくその快感は他の何にも代えがたいものがあります。

 

「怒首領蜂」という作品で、その超絶な数の敵弾に多くのシューター(シューティングゲーマー)を戦慄させた、CAVEの超弾幕シューティング第2弾が、今回のお題。

 


エスプレイドJ-B5th 5面後半 - YouTube

 

前作は純度100%の戦闘機シューティングでしたが、今回の自機は人間。何故か幽々白書を彷彿とさせる3人のキャラクターの中から自機を選択。

もちろん3人それぞれにショットの性格付けがなされています。いちばんワンコインクリアに近かったのは、通常ショットが最大5weyまで拡散するJB5thだったと記憶しています。大抵のシューティングは、単発の威力は弱いものの、画面全体に拡散する通常ショットを持つ機体が有利とされていますね。


このCAVEという会社の作るシューティングには、大きな2つの特徴があります。ひとつは自機の当たり判定の小ささ。当たり判定とは、読んで字のごとく、「自機グラフィックのここの部分に弾が触れたらアウトよ」という処理上のルールの事で、この作品のに至っては人間のアタマの部分しかその「当たり判定」がありません。シューティング創世期の作品のほとんどが「自機グラフィックがまるごと」という額面どおりの当たり判定だったのに対し、最近のシューティングではどんどん判定が小さくなっています。


プレイヤーの成長に対し、敵弾が速くなる、敵が死に際に撃ち返してくる、といった対応で難易度を徐々に上昇させていった老舗メーカー達の、難易度調整最後の砦、「敵弾そのものの物量を増やす」という段階に入ると、もう初心者の入る余地は無くなってしまい、シューティングという偉大なジャンルの進歩に翳りが見え始め、プレイヤーも徐々に離れて行きはじめた頃、「自機の判定を小さくする」というコペルニクス的発想で、シューティングに再び息吹を吹き込んだCAVEの功績はアーケードゲーム業界全体にとっても大きなものだと思われます。


そしてもうひとつの大きな特徴が、他のシューティングに類を見ない程揺ぎ無く確立された世界観。


この次の次の作品である和風もののけシューティング「ぐわんげ」では更に色濃く、前面に世界観が押し出されていますが、筆者的には怒首領蜂ほど淡白でなく、ぐわんげほどアクの強くない、この作品ぐらいのバランスが一番好きです。

これほど完璧にそう遠くない将来の現代劇を演出したシューティングが今まであったでしょうか?テキスト等の補完は一切無く、ステージ間のイラストフラッシュ(これかっこいいですよね!)や、キャラの短いボイス、スプライトアニメ等のわずかな演出だけで、見事にプレイヤーの想像力によって物語が補われ、完成してしまいます。これって、すっごいお洒落な語り口だと筆者は思うのですが。


このCAVEという生粋のシューティングメーカーは、その作品中に奏でられるBGMの評価も非常に高く、昔どこかで読んだ、「シューティングのBGMというのは、破壊音や自弾のSEと一体になって完成するものだ」というどこぞのサウンドコンポーザーの名言を正に作品中にみごとに体現しています。個人的にはボス戦のBGMが大好き。

力一杯描いた"the future"。「ファンタシースター2」

セガを一晩語るには外せない、実に「セガらしい」名作RPG。

SEGA AGES 2500 シリーズ Vol.17 PHANTASY STAR generation:2

SEGA AGES 2500 シリーズ Vol.17 PHANTASY STAR generation:2

 

「ファンタシースターオンライン」で、RPGの…いや、家庭用ゲームの新しい境地を切り開いた名作シリーズの第2弾にあたる今作。このシリーズは、サブタイトルがむやみにカッコいい事でも有名。3作目が「時の継承者」、一応シリーズ完結編である4作目では「千年紀の終わりに」。なんかもうこの字面だけでも、棚に並べて置きたくなりません?

 

一昔まえに、「シスタープリンセス」(通称シスプリ)なる、ご都合主義もそこまでやれば立派ともいえる、究極の妹系作品が人気を集めていましたが、この「妹系」なる趣向のはしりとなったのは、実に十数年以上も前に発売されたこの作品ではなかったでしょうか。 

 

正確には妹ではないのですが、「主人公を兄と慕う猫系ミュータント」という設定は昨今でいうところの「萌え」要素満点です。さすが10年先をゆくセガ。残念な事に、物語の途中、気象管理システム「アメダス」で異常気象を起こした張本人であるお姉さんと刺し違えてしまいます。臨終の際の台詞に涙した人も多いはず。

 


ファンタシースターII 還らざる時の終わりに ネイ・ファースト戦 - YouTube

 

そしてなにより、この作品を語る上で忘れてはならないのが、その世界観。1989年当時のセガの開発陣が力一杯描いた"the future"。こんなに自信満々に、「かっちょいい未来」を表現した作品を他に知りません。上記もさることながら、終始なにかメカニカルなBGM、アーミアさんのスライサー等「これがカッコいいんだ!」という押せ押せのスタンスは、やはり心に響くものが違います。

 

減塩、無添加、ビタミンなんとかがバランスよく配合された横文字の健康食品もそれはそれでようございますが、一昔前の駄菓子屋でよく見かけた原色ギラギラの前衛的な食感の銭菓子もまた、その時代背景と併せて格別の風味がありましたよね。それと、よく似ている気がします。昔のゲームって。

最期にもうひとつ、この作品以外に、この驚天動地の機能を搭載した作品を筆者は知らないのですが…。その名も…

 

バックアップデータ復旧機能。

 

そう、所謂ぶっとんだセーブデータをソフトが復旧してくれるというもの。フューチャーですね!それこそ当時は

 

「データを ふっきゅう しています…
 …
 あなたのひごろのおこないがよかったせいか、ぶじデータはふっかつしました!」


という一連のメッセージに無邪気に大感動していたものですが、今冷静になって考えると、他社はもちろんセガ自身の以後の作品にこの機能が採用された覚えがなかったり、そもそも、この復旧作業が失敗するのを見たことがなかったり。もしかすると、セガの小粋な演出だったのかもしれませんね。