しばいぬ紀行

しばいぬも歩けば棒にあたって気づいたよしなしごと

弾幕と無言の美学。「エスプレイド」

ラスボス戦の舞台は冬の都会の夜空なのですが、このラスボスの第1段階の放つ、「弾幕の雪」に鳥肌たった方も多いはず(動画では 2:50 あたり) 

 

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ゲームの面白さを構成する大事な要素として、「気持ちよさ」というのを僕はかなり上位に置いていますが、このシューティングというジャンルほどその「気持ちよさ」の核がわかりやすいものもそうありません。

なにせバキューンでドバーンでゴゴォォッッですから。特に縦スクロール型。動体視力と反射神経にすべてをかけて弾幕をかいくぐっていくその快感は他の何にも代えがたいものがあります。

 

「怒首領蜂」という作品で、その超絶な数の敵弾に多くのシューター(シューティングゲーマー)を戦慄させた、CAVEの超弾幕シューティング第2弾が、今回のお題。

 


エスプレイドJ-B5th 5面後半 - YouTube

 

前作は純度100%の戦闘機シューティングでしたが、今回の自機は人間。何故か幽々白書を彷彿とさせる3人のキャラクターの中から自機を選択。

もちろん3人それぞれにショットの性格付けがなされています。いちばんワンコインクリアに近かったのは、通常ショットが最大5weyまで拡散するJB5thだったと記憶しています。大抵のシューティングは、単発の威力は弱いものの、画面全体に拡散する通常ショットを持つ機体が有利とされていますね。


このCAVEという会社の作るシューティングには、大きな2つの特徴があります。ひとつは自機の当たり判定の小ささ。当たり判定とは、読んで字のごとく、「自機グラフィックのここの部分に弾が触れたらアウトよ」という処理上のルールの事で、この作品のに至っては人間のアタマの部分しかその「当たり判定」がありません。シューティング創世期の作品のほとんどが「自機グラフィックがまるごと」という額面どおりの当たり判定だったのに対し、最近のシューティングではどんどん判定が小さくなっています。


プレイヤーの成長に対し、敵弾が速くなる、敵が死に際に撃ち返してくる、といった対応で難易度を徐々に上昇させていった老舗メーカー達の、難易度調整最後の砦、「敵弾そのものの物量を増やす」という段階に入ると、もう初心者の入る余地は無くなってしまい、シューティングという偉大なジャンルの進歩に翳りが見え始め、プレイヤーも徐々に離れて行きはじめた頃、「自機の判定を小さくする」というコペルニクス的発想で、シューティングに再び息吹を吹き込んだCAVEの功績はアーケードゲーム業界全体にとっても大きなものだと思われます。


そしてもうひとつの大きな特徴が、他のシューティングに類を見ない程揺ぎ無く確立された世界観。


この次の次の作品である和風もののけシューティング「ぐわんげ」では更に色濃く、前面に世界観が押し出されていますが、筆者的には怒首領蜂ほど淡白でなく、ぐわんげほどアクの強くない、この作品ぐらいのバランスが一番好きです。

これほど完璧にそう遠くない将来の現代劇を演出したシューティングが今まであったでしょうか?テキスト等の補完は一切無く、ステージ間のイラストフラッシュ(これかっこいいですよね!)や、キャラの短いボイス、スプライトアニメ等のわずかな演出だけで、見事にプレイヤーの想像力によって物語が補われ、完成してしまいます。これって、すっごいお洒落な語り口だと筆者は思うのですが。


このCAVEという生粋のシューティングメーカーは、その作品中に奏でられるBGMの評価も非常に高く、昔どこかで読んだ、「シューティングのBGMというのは、破壊音や自弾のSEと一体になって完成するものだ」というどこぞのサウンドコンポーザーの名言を正に作品中にみごとに体現しています。個人的にはボス戦のBGMが大好き。