司法の見事なカッティング。「逆転裁判」
「大逆転裁判」発売記念。あちらの主人公は「 成歩堂龍之介」 ですが、元祖逆転裁判の主人公は「成歩堂龍一」です。
現実の事象から、小難しい部分をばっさり取り払って格好のよさ、気持ちのよさの部分だけを凝縮してデフォルメするという手法は昔から培われてきました。
SDガンダムしかり、ミニ四駆しかり。しかしながら、ゲームの題材として有りそうでなかった「法廷モノ」を見事にデフォルメ化し、エッセンスの核として取り込む事に成功した珠玉の名作。
どうもゲームボーイアドバンス初期のラインナップはその有り余る高性能に反して不必要に携帯機を意識した作品に収まってしまう事が多かったのですが今作はその風潮をも打破。
「法廷モノで4話構成」と聞くとボリュームの面で不安を覚えますが、まぁとにかく1話の長いこと長いこと。山手線一周ではちょっと厳しいぐらいの濃厚なストーリー展開を見せてくれます。
また、今作をプレイして誰もが感じたと思われる、 純粋なテキストの面白さ。人気のblogはその語り口の面白さや事象の捉え方に光るものが多いのですが、そういったサイトを日々巡回する目の肥えたプレーヤーにも充分通用する、かなりハイクオリティな台詞まわしで、前述の異常に長いストーリー展開にもタルむ事無く楽しめます。
作品の核となる法廷シーンでの演出も実に巧みで、実在の弁護士さんの苦笑をモノともせず、圧倒的大多数のヒトが思い描いている”法廷戦”を見事に描き出しています。こういうポジティブな「ゲームだからいいんだ」という割り切り方は、良い結果を残している場合が多い気がします。
音楽面でも、犯行シーンや供述シーンなどに素晴らしくマッチした「それっぽい」つくりで、嫌が応にも臨場感は高まります。
とにかくあらゆる面においてスキの無い、ヘビーユーザーをしても思わず唸るほど完成度の高い作品です。「法廷モノ」と聞いてわずかでも食指の動いた方ならきっとご満足頂けると思います。
個人的に「好きなゲームのヒロインは?」聞かれたらまよいなく「真宵ちゃん」です。